使い方は多目的な非接触温度計
非接触式の温度計を買いました。一時は品薄で価格が高騰していましたが、最近は量産されているためなのかお買い得な状況になっているようなのでこの機会に試してみました。購入したのはTOAMIT 東亜産業 非接触式電子温度計 アイメディータ TETM-01です。
説明書に「本器は表面温度を測定する製品です。医療用の体温計ではありません。」と書かれている温度計です。医療行為を行うために使うわけではないので、医療機器の認証を取得していなくても測定方法が同じなら個人で使う分には問題ないだろうということで色々な物の温度が測れて多機能な温度計にしました。
測定できる使用環境温度は10-40℃と幅広い室温で使えることも一つ選択の理由でもありました。
ちょっと長くなるので先に書いておくと、この種の温度計として期待していた性能はあったという評価をしています。
赤外線から温度を測るサーモパイル方式
色々な物体、人間や他の動物に限らず金属やプラスチックなども赤外線を放射しています。その放射されている量が温度によって変化するというところを利用して温度を測る方法です。物体から放出されているエネルギーをレンズで集め、センサー内の2点に生じたわずかな温度差を電気的に測ります。サーモパイルというのはセンサーの部品の名前です。非接触式の体温計や温度計として多く採用されている方法で多くの非接触式の体温計がそうだと思います。
温度測定モードは3種類
温度を測定するためのモードが3つ用意されています。
Aモードは室温測定モード
Bモードは表面温度測定モード
Cモードは人肌モード
Aモードは普通の室温計。よくある壁掛け式の電子温度計などはサーミスタという部品で温度を測っているわけですが、サーモパイルの温度計はあくまでセンサー内での温度差を測定しているものなので、そこから物体の温度を測定するためには基準となる気温が必要になるので普通の温度計もついているものと考えていいと思います。(エアコンの効いた部屋から、効いていない別の部屋に移動した場合すぐには正しい室温が表示できないはずです。)
Bモードは物体の表面の温度を測定するものです。説明書によると料理や液体などを測るのに適しているとのことです。苦手としているような物質もありますが大体の温度はわかるのでなかなか役に立ってくれています。
Cモードは人肌モード。私は額で体温を測るときに使っています。(説明書によると赤ちゃんの離乳食やミルクなどの人肌程度の温度を測るのに適していると書かれていますがその点はちょっとよくわかりません。それならBモードのほうがいいような・・・。)
BモードとCモードの違いって何だろう。どちらも表面の温度を測るものだよね~ということで、色々な物の温度を測って試していたんですが、BモードよりCモードのほうが高い温度が表示されます。これは物体の放射率の違いを考えた設定になっているんだと思います。人間の体は放射率が0.99くらいだとすると水は0.9ちょっとくらいということで計算が違ってくるので分けているのでしょう。
非接触体温計代わりに使う
Cモードの仕様として測れる温度範囲は35.0℃~43.0℃になっています。体温測定がメインの用途と設計されているのか初期設定がCモードになっていてトリガーを引くだけで簡単に測れるようになっているので使い勝手がいいです。
エラー表示と原因
エラーが出ることがあります。モードCでは体温が35℃以下の結果になるとLoエラーが表示されます。実用上、コロナ対策では発熱している人を調べたいわけなのでこの仕様は問題ないと思います。(43℃以上の場合はH1と表示されます。)
詳細な設定変更
アラーム音が鳴る温度を変更できます。初期値では38℃で音が鳴るようになっていますが37.5℃などに変更可能です。0.1℃刻みで設定できます。
温度補正値の設定ができます。何度か測ってみたところ、手持ちの管理医療機器の体温計と比べて0.2℃ほど高く出る傾向があったので-0.2に設定を変更して使っています。(発熱があるか調べたいという目的なら誤差の範囲なのでそれほど調整する必要もないかもしれません。)
信号音のオンオフ設定ができます。一回測るごとにピッとなるわけですが、その音を無音化できます。計測音だけでなくアラーム音も消えますので静かにしたい場合は便利だと思います。
実用的な精度はありそう
実際に使っていて精度がどの程度あるのかですが普通に使えると思います。比べている体温計は管理医療機器の認証番号がついているものなのですが、ほぼ同じくらいの数値(補正値込み)が出ていて、むしろアイメディータのほうが同じ場所を連続して測った場合にも数値にブレがないので使いやすいです。測定距離が1cmから3cmと広めに取られているからなのかと思います。
出てくる数字におかしなところがないか手のひらと手の甲の部分を連続で測ってみても、ちゃんと手のひら側のほうが高い数字になります。(手の甲と掌なら多くの場合、掌のほうが体温が高いと思います。つまり適当な数字をランダムに表示させているということはありませんでした。)このことから温度差の検出は機能していることは確認できました。
「表面温度を測定する製品です。医療用の体温計ではありません。」とパッケージに書かれているようにあくまで温度計。しかし体温は測れるので管理医療機器の認証を取得した医療用の体温計が必要という業務でなければ出てくる数字は問題なさそうと思いました。
料理の温度を測る
料理の時に温度を測定するのが簡単にできて楽しい機能です。水温を60℃くらいにしたいな~と思ったときに火の加減を調整するのに使っていたりします。棒タイプの料理用温度計より早く計測できるのでこのあたりはいいなと感じる瞬間です。
注意点としては、センサー部分に湯気が入っていくようなのは機械にとって良くないので沸騰している鍋の淵より外側から測ったほうがいいと思います。
もう1点、測れないものもあります。これは料理中に限らないことですが、ツルツルした金属の研磨面の温度を測るのは苦手のようです。光沢感のあるステンレス鍋を測っていると鍋蓋の温度が35℃と表示されたものの実際の鍋の中味の温度は66℃といった大きな誤差が出る条件があります。この理由はBモード(表面温度測定)の放射率の設定によるものだと思います。たぶんBモードは水の放射率に近い数値にしているのだと思いますが、ピカピカの鍋の放射率はもっと小さかったりするために大きく違った温度が表示されることもあります。(*光沢感のある金属部分もテープを貼ってしまえば、その部分は温度を測れるようになります。)
中まで火が通っているか確かめたいときはブスっとさせるような料理用の温度計を使っていますが、鍋の中の料理は肉も魚も絶対おかしいと思うような変な数字は出たことがないのでおおよその数値をみるのには使えそうかなと感じています。
まとめ
あまり測定の精度は期待せずに買ったものですが想像していたより良い物だったと思います。正確な温度が測れたお湯の場合、料理用の棒状の温度計で60.7℃となっていたものが61.2℃となったので数秒で測ることが出来てこのくらいの精度があればかなり満足でした。保温温度が70℃程度の設定されていることが多い炊飯器のご飯を測ってみると71.4℃。
料理や液体は測ることができる温度計を持っていたりするので、これまで測れなかったものを測ろうと考えて、日向のコンクリートを測ってみると47.8℃、ベランダの手すりが52.2℃とわかりました。
ちょっと熱くなっているUSB充電器が42.8℃だったり、ノートパソコンのキーボードが35.2℃と暖かくなっている体感から納得できる数値でした。
今のところ、全然体感と合わない数字が出たのはツルツルピカピカの鍋で熱い!となった時くらいですが、鍋でなくてもツルツルな金属は難しいと思います。
低価格な非接触式の温度計にどのくらい期待していいのかというのはありますが、人体や料理の温度は手持ちの温度計の値に近いので、なかなか正確な数値が出ているんじゃないかと思います。
赤外線で温度を測る機械で高価格なものでは、測定する物体の放射率を自分で入力した上で、レーザー光で測定する物体との距離を自動で計算してくれるようなものもあります。そういうものと比べると精度は全然低いだろうとは思いますが、おおよその温度を知りたいという用途では十分でこういった製品なりにしっかりしていると感じています。
使いやすさという点は握りやすい形状で、非接触式なので温度計を冷やす必要がなく連続で使用できます。測定もピッと秒単位。
電池がコイン電池ではなくどこにでもある単3電池なのが長く使っていくにはありがたい。自動電源オフ機能がついているので電源の切り忘れがないのも〇。
温度センサーが奥まった位置にあるので汚れが付きにくいというのもいいと思います。
説明書によると測定距離が1cmから3cmとなっているのでそのくらい幅があると合わせやすいです。指1本から2本と考えると範囲に入りやすいです。
そして実はこの製品を選ぶときに決め手になったことなのですが、使用環境温度の広さが10℃~40℃ということで使える温度帯が広いのはけっこう大事だと思います。
体温や水の温度はなかなかいい精度で測れているので実用的に役に立ちますが、それ以外でもなんとなく測ってみたくなった湯煎しているレトルトカレーが82.4℃、そこから開封し器に移して食べる直前には62.1℃になっていて、横にあるご飯が54.2℃!なんてことも手軽に測れるのはちょっと楽しいと思いました。
あとは耐久性がどのくらいあるのかといったところですが、壊れたらその時はこのページで壊れたーと報告することにします。こういったものが安く買えるのはそういう世の中だからこその進歩があるんだと感じますよね・・・